山下万里香 (やました まりか)

スタイリスト/パーソナルスタイリスト
「デイズ・ヌーヴォー」代表
M-decora(エムデコラ) ブランド代表
ブライダルスタイリストとして10年間に2000件の新郎新婦をスタイリング。
ブライダル業界におけるスタイリストの活動そのものを確立する。
独立後は自社ブランドを立ち上げ、アイテムの販売を始めると共に、パーソナルスタイリストとしてパーソナルカラー/骨格診断を通じてお客様一人一人の魅力を引き出すスタイルが、全国のファンに愛されている。
現在は”お客様を主役にする”ための現場販売力の強化研修の他、大手百貨店などにおけるイベントプロデュースなど、ファッション業界全体の活性化に積極的に取り組んでいる。
著書「スタイリストが教えるお客さまをもっと素敵にする!接客術」(同文館出版)

スタイリスト/パーソナルスタイリストの山下万里香さんにお話しをお伺いしました。
大手百貨店のイベントプロデュース、自社ブランドの立ち上げ、書籍の出版と、引っ張りだこのご活躍をされていますが、そこには10年間に及ぶブライダル業界でのスタイリスト活動が根底にありました。
まだブライダル業界でのスタイリストの仕事自体が認知も少なく、確立されていなかった時代に、なぜ多くのお客様の満足度が極めて高い人気スタイリストになられたのか?
また、ファッション業界の現況に対して、鋭い視点で業界全体の向上を提唱され、販売力アップの研修をされている、その活動にかける想いをたっぷりとお伺いしました。
ファッション業界を始めとする販売業界の方々には必見の内容です。

インタビュワー 株式会社hug マネジメント 北村壮一郎

より良く魅せる、本来の魅力を引き出すのが、私の役割

北村:
山下さん…いや、親しみを込めて万里香さんとお呼びさせていただきますね。
万里香さんは、少し前にご出版されましたね、おめでとうございます。

山下さん:
はい、ありがとうございます。

北村:
講師業以外での華々しいご活躍のイメージがありますが、現在のご活動についてお話しいただけますでしょうか?

山下さん:
はい、私は肩書をスタイリスト、およびパーソナルスタイリスト、と名乗らせていただいています。

北村:
この二つの違いについて、わからないかたもいらっしゃると思います。
ご説明いただけますでしょうか?

山下さん:
スタイリストの活動は、イベントや企業さまの商品を美しく魅せるのが目的です。
例えば、私が携わっているお仕事の一つに、あるブランドさまのパンフレットで、商品イメージに沿うようにモデルスタイリングするお仕事があります。

北村:
こう捉えると良いでしょうか?
スタイリストというのは商品やプロダクトを、より良く魅せる、その魅力を引き出すような?

山下さん:
そうですね、対象が企業や、服や、家具…といったところです。
対して、パーソナルスタイリストは、人が対象、ということです。

北村:
どんなかたがパーソナルスタイリングを受けにこられるのですか?

山下さん:
私の場合、30代後半から50代くらいの女性が多いですね。
子育てやお仕事で、 周りのことを一生懸命大切にするあまり、自分のことを後回しにされてこられた方々です。
ふと気づいたら、自分のことがわからない、と感じるようになられて、そろそろ自分のことも、とお考えの方々が来られます。

北村:
そのようなお悩みをお持ちのかたは、潜在的にたくさんいらっしゃる気がしますね。

山下さん:
そうなんです。
まずは、ご自身を知っていただくことから始めるのですが、多くのかたが、ご自身の魅力のことと、世の中に溢れている情報…例えば流行、周りの人が着ているもの、家族の意見などが、ごちゃ混ぜで混乱しているような状態なのです。
そこで私がお手伝いさせていただくのは、まずは自分目線に戻してあげる、という働きかけです。
そのためにはパーソナルカラー、骨格分析といった、ご自身を客観的に知っていただくことを体験いただくことに加え、たっぷり今のお気持ちを話していただくカウンセリング時間にチカラを注いでいます。

北村:
みなさまのご反応はいかがですか?

山下さん:
お洋服にしても、アクセサリーにしても、理論に沿ってアイテムを選べるようになりますので、安心してチャレンジ出来る、冒険しても絶対に似合うなど、魔法のような結果を感じていただけますね。
それぞれの肌や目が際立つ素材や色、着ていて楽、身につけて自然に見えるものをパーソナルカラー、骨格分析で導き出すのですが、これは髪型、メイク、お洋服の柄やアクセサリーなど、全般に活用いただけます。

北村:
女性は特に喜ばれるのではないでしょうか?

山下さん:
表情が、ものすごく変わられます。
更に良い影響として、心の中も変わります。
私が携わったお客様で、長年心理カウンセリング受けておられた方が、ファッションをきっかけに心身ともに元気になり、カウンセリングが必要なくなりました、と。
お客様自身も、その影響を認められるのですよね。
自分を解放する、と宣言されて、私がお薦めしたもの一式を買い揃えていただき、まるで人生が180度変わったかたもいらっしゃいます。
外見が内面に及ぼす影響に、私自身も驚きを隠せません。

北村:
すごい効果ですね。
お洋服やアクセサリーなどを買う時も、今までは好みで買っていたのが、自分の魅力を引き出すものを選べるようになるのですね。
このスキルは、本当はデパートや、ファッション専門店のスタッフの方々が、出来ると良いと感じました。

山下さん:
そうですね。
正に私が今活動させていただいている、販売員教育の一環です。

16年前に目指した、ファッションと心理学の融合が実現

北村:
では、そのことはあとでたっぷりお聞かせいただきましょう。
万里香さんのキャリアについてお聞かせください。
スタイリストを志されたのは、いつですか?

山下さん:
私のキャリアのスタートは、大学時代に、スタイリストの師匠の元に携わるようになったことです。
雑誌に連載も持たれていて、特集ページにも取り上げられたりと、当時花形のスタイリストでした。
私はこの師匠に、とにかく”マイノリティであれ”と教えていただきました。
スタイリストなのに、 ファッションは美しくあれ、じゃないぞ、 頭使って生きろ、って(笑)

北村:
ずいぶん個性的なご指導ですね(笑)

山下さん:
自分が何着たいのか?どう生きたいのか?考えてから服を着ろ、というような教えでした。
ファッションを通じて、人生観を伝えていただいてたのかなと、感じます。

北村:
今の時代に必要な在り方を、ずいぶん前に習得できたのですね。
では、これをきっかけに、スタイリストの道を歩みだされた?

山下さん:
いえ、当時は外国語大学に通う学生だったので、業界への強烈な憧れはあったのですが、端から無理と諦め、システム会社に就職しました。
しかし、残業が多い会社で、身体を壊してしまい、自分に向き合ったのです。
元々私がやりたいことは何か?
その答えは、興味があったファッションと心理学を組み合わせて、何か職を得れないか、ということでした。
その時に、運よくパーソナルカラーを知ることになりました。

北村:
師匠の教えがここで活きたのですね?

山下さん:
人の心に響くと言いますか、その人の価値を認めることですよね。
これは、私のやりたいことだと、腑に落ちました。
ちょうど今から16年前、まだまだファッションと心理の関係は認知されていない時代です。

北村:
認知のない時代に、それを広めていくのは、大変だったのではないですか?

山下さん:
はい、実際はどのようにファッション業界に入り込んでいくかさえもわかりませんでした。
仕事として成り立つのか?
不安もよぎりましたが、運よくブライダルの業界からお声がけをいただいたのです。

ブライダル業界におけるスタイリストの礎を築く

北村:
ブライダル業界でのスタイリストの求められていることは、どんな内容なのですか?

山下さん:
ご成婚される花嫁さまに、あらゆる角度から、最高の結婚式を過ごしていただくために、1年間おつきあいさせていただきます。
まずはカウンセリングをして、お似合いのパーソナルカラーと骨格分析、そのままウェディングドレスショップに同行して、おすすめのドレスのご提案。
ドレスショップのかたと連携を取りながら、より良く魅せるための小物のご提案。
あわせて和装も選んでいただきます。

北村:
専属付き人のようですね。

山下さん:
まだまだありますよ(笑)
衣装が決まったら、ヘアスタイルやメイク、ブーケのご提案。
ポージングのアドバイスを入れての撮影の立ち会い。
ドレスを着用しての歩き方、お辞儀の仕方、乾杯の仕方。
怒涛の1年間を経て、式の当日は感動のお立ち合いです。
ここまでご一緒すると、勝手に私の中で花嫁さまに対して母心が湧いていまして(笑)
1年間もおつきあいさせていただくので、悩みのご相談に乗らさせていただくことも多々ありました。

北村:
ここまで親身になってやってくれるスタイリストさんも、なかなかいないのでは?と思います。

山下さん:
結局、トータルでは10年間、ブライダル業界でお世話になりました。
ブライダルはとても好きな業界で、気づけば年間200件ものサポートをさせていただいくようになりました。

北村:
それは、超人的な数。

山下さん:
はい、もう時間との闘いでしたね。

北村:
年間200件されてきたということは、それだけの数、販売をされてきたわけで、相当販売力がついたのではないでしょうか?

山下さん:
その経験が後程、販売心理に関する書籍を出版することに繋がるのですから、あの時の経験は本当に貴重でした。
お客様には綺麗になっていただくことで喜んでいただき、ブライダル業界としては売上を上げることで、ビジネスとして喜んでいただく、まさにその全てに繋がるポジションだったのです。
そこにはお客様と深いお付き合いができる、パーソナルスタイリストとしての立場が信頼を生み出し、ました。
だからこそ、まりかさんがお薦めするから、これも選ぼう、買おうということに繋がっていく、満足度アップの連鎖が起こっていました。

北村:
業界全体の発展の期待を背負われていたわけですね。
それにしても良い形ですね、お客様にも喜んでいただき、業者間にも信頼が行き渡り、と。

山下さん:
はい、この経験を通して、スタイリストがいたら、売上が上がるという確信ができましたし、同時に顧客心理を掴むことで、売れないものも売れるようになるのだと。
それが満足度に表れ、口コミに繋がり、また次のお客様、という形で、私が円滑油のような立場になり、良い循環をしていたと思います。

北村:
その分、プレッシャーも相当だったのでは?

山下さん:
毎日、必死でしたね。
でも、辞めずにやってこれたのは、私の成長の段階に応じて、お客様が喜びを表現してくださったから、なのです。

北村:
成長の段階?

山下さん:
最初はただ、ありがとうございますとお礼を言われるだけだったのですが、一年を過ぎたあたりから喜びの言葉があふれた、大変丁寧なメールでのお礼を頂くようになりました。
それはやがて、熱烈な言葉が記された、熱い想いのお手紙になりました。
”万里香さんと出会えてなかったら、今日という日はありません”とか、”妻を最高に綺麗にしてくれてありがとう”とか、ご本人さま以外のお母さま、新郎さまからも、たくさん喜びにあふれたお言葉をいただけるようになりました。

プロデュース、自社ブランド立ち上げ…今までの経験が花開きだす

北村:
幸せの絶頂ですね、新婦さまも万里香さんも。
このままずっとブライダル業界にいても、相応のご活躍をされていたのでは?

山下さん:
幸せな毎日でしたが、想いとして、本来私がやりたかったファッションの仕事ができないと感じ続けていた自分もいました。
幸い後輩も育ってきたので、10年の区切りを機にブライダル業界を離れ、現在私のオフィスがあります、ヨリドコサロンに携わることになったのです。

北村:
こちらはレンタルスペースも兼ねていますね。
以前にも何度かお伺いしましたが、万里香さんを支えてくださる方々がいらっしゃいますね。

山下さん:
人との出会いがきっかけで、チャレンジすることで未来が開けていきましたね。
ここに来てからは、”エムデコラー”とブランドを立ち上げました。
立ち上げ時は、アイテムすら決まってなかったんですが、帽子とスカーフターバンから始まり、今はストール、この魔法ジュエリーもそうですし、ハンカチも今製作中で、という風に、自分が想像するより早い展開で広がっていきました。
また並行して、デパートや販売店などのイベントプロデュースもお話しをいただくようになりました。
最初はそんなこと、考えたこともなかったのですが。

北村:
こちらのオフィスでも、定期的にイベントを開催されてご盛会です。
イベントのプロデュースは今後も増えていきそうですね。

山下さん:
はい、ありがとうございます。
百貨店のバイヤーさまより、複数のブランドを取りまとめてイベント出展させていただく、”まりかプロデュースの部屋”という、私の世界観を通して販売をするイベントは、おかげさまで非常に好評をいただいております。
こういった現場のプロデュースを経て、現場の販売力の底上げが必要だということも強く感じるようになりました。

北村:
なるほど、それが販売職について書かれた、書籍に繋がっていくのですね?
書籍だけでなく、業界紙にコラムも出されているそうで?

山下さん:
“ファッション販売”という業界誌です。
毎月ではないですが、年に4回くらい、寄稿させていただいています。
ファッションの販売に対する、私なりの想いを寄稿させていただいています。

お客様を主役に。現場で最も大切な、販売員の意識向上

北村:
では最後になりますが、今後の企業研修についてお聞かせください。
現場の販売力強化について、強い想いを持たれているのですね?

山下さん:
私の企業研修、すなわち、現場店舗の販売力をあげることに、取り組んでいます。
きっかけは先ほど話題にしてくださった、書籍の出版でした。
書籍を執筆するにあたり、ファッション販売の現場について、現状を色々と考えました。
購入する側は、何を買えば良いかが分からない、買い上手になれていないという悩みがあり、販売する側は、売上主義になって、お客様が喜ぶ方向ではない販売力が定着してしまっている。
そこで、もっとお客様を喜ばせることに現場が全力を注いだら、自然と売り上げが上がるはずだ、という視点からの、販売員育成を行おうと決め、書籍にもそれを反映させました。

北村:
これはまさに万里香さんが、ブライダル業界でやってきた経験に着得していますね。

山下さん:
その通りです。
私がブライダル業界でやり続けていたことは、お客様を主役に、ということです。
今の時代、商品が主役になっているお店が多い気がします。
だから、販売員が売りたい商品を販売しがちですが、お客様を主役にするという意識を持つことで、接客そのものも、お薦めする商品も変わってきます。

北村:
販売員として、とても大事な意識ですね。
でも、それを現場に落とし込むのは大変ではありませんか?
具体的にはどのように研修をされるのでしょうか?

山下さん:
まず私は販売員の個性を見るようにしています。
販売員の能力も千差万別、販売力が高い場合もありますし、サポート上手の場合もあります。
販売が得意な販売員を支える役割が適してる人もいますし、チームとして良い空気を作り出せる人もいます。
さらに言えば、ハキハキと動ける人もいれば、何をやってもスマートにできないキャラクターの人だっています。
皆さん、それぞれが個性があり、それに応じた適材適所があります。
それを見出し、認めてあげることが、研修の第一歩です。

北村:
それができれば、やがてチームとしても強くなりますね。

山下さん:
実際の研修の現場では、これをワークしていただく中で、販売員の個性を見出していきます。
ワークの取り組み方は、個性がすごく出て、わかりやすいのですね。

北村:
これらの販売員の販売力をアップさせる研修は、どんな業種が適していますでしょうか?

山下さん:
二つ思いがあります。
一つは私を育ててくれた、ブライダル業界に対して。
そして、もう一つは、やはり今携わっています、ファッションの業界です。
ファッション業界は、低価格化が進みすぎて、出口が見えないトンネルに入ってしまったかのよう。
価格のみで勝負するのではなく、販売員のスキルで、お客様が満足くださる、商品の提案から販売に繋がる、新しい常識を創りだしていきたいです。
ファッション業界の販売員って、かつてはハウスマヌカンと呼ばれ、花形職業だったのですよ。

北村:
はい、わかります、私もその時代ですから。

山下さん:
お客様目線で販売するのが当たり前の時代が到来することを、目指しています。
それは、お客様はもちろん嬉しいですし、喜んでいただけるから販売員も嬉しい。
メーカーだって良い商品が売れるようになりますから、やはり嬉しい。
これが本来の販売の常識だと思うのですが、もう一度、販売の基本として、研修を通して浸透させていくことでファッション業界が笑顔でいっぱいになってもらいたいです。

北村:
これからのファッション業界、ブライダル業界の救世主になっていかれることを願っています。
本日は貴重なお話しをありがとうございます。

山下万里香 (やました まりか)
スタイリスト/パーソナルスタイリスト
「デイズ・ヌーヴォー」代表
M-decora(エムデコラ) ブランド代表
ブライダルスタイリストとして10年間に2000件の新郎新婦をスタイリング。
ブライダル業界におけるスタイリストの活動そのものを確立する。
独立後は自社ブランドを立ち上げ、アイテムの販売を始めると共に、パーソナルスタイリストとしてパーソナルカラー/骨格診断を通じてお客様一人一人の魅力を引き出すスタイルが、全国のファンに愛されている。
現在は”お客様を主役にする”ための現場販売力の強化研修の他、大手百貨店などにおけるイベントプロデュースなど、ファッション業界全体の活性化に積極的に取り組んでいる。
著書「スタイリストが教えるお客さまをもっと素敵にする!接客術」(同文館出版)